古くて新しい、求められる医療をめざして
人類は長い年月を自然との調和し、自然に対する感謝や畏敬を抱いて生活してきました。文明が発展するようになり、自然をコントロールするという西洋視観の広がりが、現在では当たり前のように我々の日常生活や考え方にも影響を与えています。そして、自然は調和を崩し、その中で生活する人類も他の生物の生命にも多大な影響を与えながら崩壊に向かっているように感じます。
私が漢方医療に専念するようになったきっかけですが、学生時代のころ、薬(ステロイド)で治療されている患者さんがおり、結局は亡くなられてしまいましたが、薬による副作用でひどく苦しんでおられました。薬による苦しみは元の病によるものより得てしてひどいことが多々あります。抗がん剤による副作用や、検査による負担、時にはそういった医療による負担で亡くなってしまうことも多く、これは医原病と呼ばれております。アメリカなどではこれで亡くなる方が元の病気で亡くなるよりも多いと考えられています。医原病は、ほとんどの場合、すべて患者さんの負担になります。
転機は医師になり4年目、高知県旧中村市民病院(現四万十市民病院)に地域医療をすることになり赴任した時の事です。以前からその病院は漢方治療などにより地域を活性化するコンセプトで鍼灸治療院などの施設なども作られていた経緯で院内に多種類の漢方薬(エキス剤)が残されておりました。これを手に取った私はあらゆる患者さんに使ってみることにしました。
それから16年ほど(2026年現在)経ちましたが、漢方治療の最大の魅力は、その圧倒的な副作用の低さと、根本的な治療方法が存在することです。風邪から難病と言われるものまで、患者さんの親身になって、置いてけぼりな医療でなく、心と体双方を治していくところにあるのだと思います。漢方・中医学の世界は自然界の動きを理解し、人体を自然の中の一つの調和のとれた自然の一部と考え、表面に現れている症状から体の内面を診断し治療していきます。
その後は、高知中医学研究会の私の師匠でもある木田正博先生(高知県木田山薬堂診療所院長)、故矢田修先生(鍼灸師)などの勉強会にも顔を出すようになり、漢方医への道を歩むようになったのです。
内なる自然を取り戻すべく、本来の抵抗力、免疫力を高め病邪を取り除いていきます。生薬の使い方を誤れば、多少なりとも副作用なども出現することはありえます。しかしそれらを最小限に、効果を最大限に発揮するよう治療します。患者さんと一緒になって身体の本来の回復力を念頭に病気を追い出してまいります。
本来の自然の一部分である人体を調和のある形にすることから体の自然を取り戻し、さらには現代の自然環境の事などに想いを寄せながら自身の成長、世の中の発展、調和のある世界を目指したいものです。
長くなりましたが、現在の日本で漢方を拡げる意味合いは、漢方医療というやり方が、自然の生薬を用い、人体の不調和である病気という不自然な状態を、より自然の本来あるべき形に整えていく、そういった自然観を取り戻す必然性に根差しているような気がします。
